ヒッチコック
監督:サーシャ・ガヴァシ
サスペンスの神様ヒッチコックの『サイコ』誕生秘話を映画化。
所謂伝記映画なのだが、ヒッチコックのそれらしく冒頭からシニカルで、映画という実態のない作品に対する人間の姿勢が真摯に見えるし滑稽にも見える。人生のあらゆる物が作用しあって映画は出来るのだと改めて思った。
最初に言っておくと、ヒッチコックの人生を辿る映画ではなくてあくまでも『サイコ』誕生の過程を描いた作品である。60歳を迎えるヒッチコックが「引退か?」と言われながらも初心に還って自主制作をする姿勢から見るヒッチコックの半生というべきか。
チャーミングだが自信に満ち溢れるヒッチコックはアンソニー・ホプキンスの新境地?とにかく魅力的な人間に描かれていた。アンソニー・ホプキンス自身は別にヒッチコック本人を意識して演技をしたわけではないと語っていたので、それが逆に映画として良かったのかもしれない。
実際にいる人間が映画になると、本人のキャラクターに役者の味がプラスされてあらゆるポイントが誇張される。それがいい方向にこの映画は向いたのだなと思った。特に映画監督という職業の映画なので、この映画という媒体じたいに遊びを入れないと面白くなくなることは間違いない。それを適度に遊び、名作への想いも伝わってくる。
予告編でも出てくるヒッチコックの指揮者をマネするシーンは素晴らしかった。スタッフや役者を指揮するのはもちろんなのだが、観客の感情をも指揮し、劇場に音楽と歓声を奏でるヒッチコックの姿に超鳥肌。オチも最高。次はあの映画だもんね。
とまあ、アンソニー・ホプキンスとヘレン・ミレンの演技力が爆発していた。あの時代の撮影所の雰囲気も出ていたし、映画関係者として見てて楽しかったなー。ヒッチコックは撮影所の助監督から監督になったというのも無駄に親近感が湧いてしまったし。映倫の検閲は最高でしたね。カラーではなく白黒でこの映画を観ても楽しかったかな?とか思ったり。
音楽はダニーエルフマンがまたもや爆発してた。伝記映画にダニーエルフマンってどうかな?と思ったけど、映画監督の話を映画化するというのはもうある意味ファンタジーなんだと思ったら物凄くしっくりきた。いい仕事してました。
久々にこんなスベってる宣伝見たなあと思ったヒッチコックの爆笑問題の田中。
映画館で観てとってもツラくなりました。スベるってやっぱ怖い。